全国木材検査・研究協会






(1)建築基準法と建築材料
建築材料の品質は
建築基準法第37条「建築材料の品質」において、「建築物の基礎、主要構造部に使用する木材、鋼材、コンクリートその他の建築材料は、その品質がJIS(日本工業規格)又はJAS(日本農林規格)に適合するものであること。」と、定められています。
構造設計の原則は
建築基準法施行令第36条の2「構造設計の原則」において、「建築物の構造設計に当たっては、その用途、規模及び構造の種類並びに土地の状況に応じて柱、梁、壁等を有効に配置して、建築物全体が、これに作用する自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して、一様に構造耐力上安全であるようにすべきものとする。」と、定められています。

「建築基準法」、「建築基準法施行令」及び告示「構造耐力上主要な部分である柱及び横架材に使用する集成材その他の木材の品質の強度及び耐久性に関する基準を定める件」は、[関連法規一覧]を開いてください。
(2)
木造の公共建築物等の設計指針である「木造計画・設計基準」における製材の規格
国土交通省大臣官房庁営繕部は低層の木造公共建築の設計指針となる「木造計画・設計基準」を平成23年5月10日制定・公表しました。
詳しくは、「木造計画・設計基準」を参照。
この中で、建築工事に使用する材料について、次のように規定しています。
製材の規格については、原則としてJASに適合するもの又は国土交通大臣の指定を受けたものとする。
製材の品質
製材は、建築基準法第37 条及び平12 建告第1446 号において指定建築材料とされていないため、仕様規定に定めがある場合(建築基準法施行令第46 条第2項等)を除き、法令上は構造耐力上主要な部分に用いる製材をJAS に適合させる必要はないが、構造耐力上主要な部分に用いる製材として一定の品質を確保する観点から、原則として、製材を用いる場合は製材のJAS に適合する木材(JAS に規定する含水率表示SD15 又は20)又は国土交通大臣の指定を受けたもの(SD20 以下)(以下「製材のJAS に適合する木材等」という。)を用いる。
ただし、製材のJAS に適合する木材等を用いないことができる場合は、次の①から③の制限をすべて満たす場合に限る。
構造計算方法による制限
建築基準法施行令第46 条第2項等により、法令上、構造耐力上主要な部分である柱及び横架材に対し製材のJAS に適合する木材等を用いなければならない場合に該当しないこと
個別の自由による制限(以下のアからウのいずれかに該当するもの
ア.
使用量が極小であること
イ.
工事場所が離島であること
ウ.
特定の製材を用いる必要がある場合であって、製材のJAS に適合する木材等として出荷できない場合であること。
機械的性質による制限(以下のアからウのすべてに該当するもの
ア.
製材のJAS 規格第6条に規定する曲げ性能(曲げヤング係数)の確認と同等の確認(これと同等の打撃による確認を含む)ができること。曲げヤング係数の目安を表3.3.2.1 に示す。ただし、この際に用いることのできる基準強度は、無等級材の基準強度を上限とする。
イ.
原則として、製材のJAS 規格第5条に規定する含水率の確認ができ、その平均値が20%以下であることが確認できること。ただし、広葉樹を用いる必要がある場合、古材を再利用する場合については、含水率の制限がない計算方法を選択した上で、将来において、部材の収縮、変形等によって支障が生じないような工夫をする場合に限っては、含水率が20%以上の木材を用いることも許容するものとする。
ウ.
製材のJAS 規格第6条に規定する節、集中節、丸身、貫通割れ、目周り、腐朽、曲がり、狂い及びその他の欠点について、品質の基準を満たすことが確認できること。
なお、製材のJAS に適合する木材等とすること又は上記の①~③の制限をすべて満たすことについては、許容応力度計算又はそれ以上の高度な計算を行う場合について適用するが、住宅用途の場合や平屋建ての場合において許容応力度計算を行わない四号建物についても、製材のJAS に適合する木材等とすること又は上記①~③の制限をすべて満たすことを適用することが望ましい。
(3)公共建築物工事標準仕様書における(在来住宅の)木工事の材料
公共の建築物の建築工事に使用する材料について、次のように規定しています。
木材の工事現場搬入時の含水率
(特記がなければA種とする。)
(工事現場搬入時, 含水率の測定は高周波水分計による。)
木材の品質について(注)
製材は、製材のJAS規格による。
丸太は、素材のJAS規格により皮はぎ材とする。
保存処理材は、製材のJAS規格の保存処理性能区分K3以上の保存処理が施されたもの。
構造材及び下地材の品質の基準は、特記がなければ次による。
(ⅰ)
化粧の場合は、製材のJAS規格の造作用製材の材面基準上小節とする。心持ち材は背割り材とする。
(ⅱ)
小屋材及び吊木受に丸太を使用する場合は、素材のJAS規格による2等とする。
(ⅲ)上記以外の場合は、製材のJAS規格による2級以上
造作材の品質の基準(特記がなければA種とする。)
(注)
公共住宅建設工事共通仕様書 平成22年度版(平成23年3月発行)の木工事(鉄筋コンクリート造等の内部工事における木材等を取り扱う工事に適用する。)における木材の品質については、「製材の日本農林規格」によるものとして、原則としてJASマーク表示品とする。となっている。
(4)枠組壁工法又は木質プレハブ工法を用いた建築物の構造用部材の規格
「枠組壁工法又は木質プレハブ工法を用いた建築物の構造用部材の規格」は、 [関連法規一覧]を開いてください。
(5)木材の基準強度について
JASの目視等級区分構造用製材、機械等級区分構造用製材、枠組壁工法構造用製材等について、樹種、等級ごとに基準強度が設定されています。
「木材の基準強度Fc、Ft、Fb及びFsを定める件」はこちらから
(6)JAS製材品のメリット
建築行政とJAS製材
一定高さ以上の建築物の安全性確保を目的として、平成18年に建築確認・検査の厳格化を内容とした概略次のような建築基準法の一部改正が行われました。
このことから、建築材料においても品質・強度等の基準に適合したJAS製材品の需要が増大すると思われます。
JAS製材品のメリット
JAS製材品は、お客様が利用しやすいように、用途別、製品別に項目を定めて規格化が行われています。このためJAS製材品は、全国どこでも一定の品質の製品が入手でき、品質も保証されています。
JAS製材品には、次のような良さがあります。
用途別の規格化
例えば目視等級区分構造用製材の横架材は甲種、 柱材は乙種のように用途別に規格化されており、選択されやすい
品質基準の統一
樹種、等級別に品質基準が統一されております
製品寸法の明確化
製品寸法とその許容差が製品の用途や含水率に応じて決められております
含水率表示の明確化
乾燥材の含水率が柱材や造作用材等に応じて決められています
保存処理表示の明確化
樹種、薬剤に応じて保存処理基準がもうけられており、用途別に最適なものが求められます
強度性能表示の明確化
構造用製材について樹種、等級に対応した基準強度が規定されており、強度性能が明確にされます
乾燥材のメリット
建築後の年数が経過した木造住宅における部材の含水率は、おおよそ10%~20%です。木材の収縮は、含水率が約30%以下に低下してから生じるため、未乾燥材を使用した場合は、建築後に収縮による寸法変化が生じることになります。
 このためJASでは構造用製材及び造作材の乾燥材の含水率基準を、仕上げ材について20%以下のレベルに設定しています。(枠組壁工法構造用製材については19%以下)。
これによって建築後の不具合を防ぐことができます。
保存処理材のメリット
木材は、長期の湿潤状態に放置されるなど使用環境が厳しい場合には、腐朽、蟻害、虫害などによって短期間のうちに使用に耐えられなくなります。
JASで規定する保存処理は、製材に木材保存剤を加圧注入処理することによって、耐久性を伸ばす処理をいいます。
木材は、環境条件によって、その耐久性が大きく異なることから、使用環境ごとに性能区分が五つに区分されています(性能区分及び保存処理薬剤は、規格を参照してください)。